2018年7月2日月曜日

「芸の鬼」「高座への厳しさ人一倍」歌丸さん悼む声続々

 日本講談協会会長で講談師の神田紅さん(66)が、桂歌丸さんについて、追悼の思いを語った。

     ◇

 落語芸術協会にも所属している関係で何度かご一緒させていただきました。落語を愛し、最後まで高座への執念を見せていました。芸の虫で芸の鬼。「噺家(はなしか)は高座で死ねたら本懐」と心底思っていたのでしょう。

 15年くらい前でしたか、仕事でタイのバンコクに一緒に行きました。「お弟子さんにお土産は買わないんですか」と尋ねると、「自分で稼いで買ってこそいいんだ」と言うんです。弟子との関係をきちんと保つというのか、歌丸さんならではのダンディズムを感じました。とてもオシャレな人でブランドものもたくさん持っていました。それでいて、それが嫌みにならないんです。男性の色気を感じさせる人でした。

(編集委員・小泉信一

各界から悼む声続々

 上方落語協会副会長の桂米団治さんは「誰に対しても物腰が柔らかく、本当に優しい師匠でいらっしゃいました。でも、高座に対する厳しさは人一倍で……。常にお客のことを一番に考えて来られた師匠のお姿、大いに学ばせていただきました。心よりご冥福をお祈り申し上げます」との談話を出した。

 今年5月、上方落語協会の会長に就任した笑福亭仁智さんは「東西交流を盛んにするためお願いにあがろうと思っていた矢先のことで、ただただ驚いております。東京の落語を今日の隆盛に導かれた大功労者で、お元気に復帰されると思っておりましたので、残念でなりません。心よりご冥福をお祈り申し上げます」とコメントした。

 桂米丸さん(93)は、先立った弟子の歌丸さんを悼んだ。「ショックです。最近暑い日が続いていたので心配していたのですが。私より先に逝ってしまうなんて、胸がいっぱいです。最後に電話で話した時も、元気そうな声だったんですけどね。私が11歳上ですが、もともとは兄弟弟子で、それなのに『師匠、師匠』と仕えてくれて、盆、暮れにはあいさつを欠かしませんでした。芸は新作だけでなく古典もしっかりとやって、器用な人でしたね」(星賀亨弘)

 漫談家の春日三球さん(84)も桂歌丸さんの気さくな人柄を振り返った。

    ◇

 「地下鉄漫才」が売れたころ、地方興行でよくご一緒しました。列車に乗っていると、「名人が作った竿(さお)はいいんだ」「自分だけの川がほしい」などと、ご自身の趣味でもある釣りの話をしてくるんです。

 足腰が弱る前は本当に熱心だったんでしょう。夏は大物狙いで渓流へ行ったそうです。山奥にいることに気づき、歌丸さん1人だけだったこともあったようですよ。周りに猿がいっぱいいて、取り囲むように歌丸さんをじっと見ていたんだそうです。「怖かったなあ。あのときは……」と笑顔で話していたことが忘れられません。(小泉信一

Let's block ads! (Why?)

Read Again https://www.asahi.com/articles/ASL725WB9L72ULZU00W.html

0 件のコメント:

コメントを投稿