2018年8月1日水曜日

ワンマン会長に反旗 連盟に333人が告発状

全国高校総体ボクシング競技大会の開会式で入場行進する選手たち(手前)。欠席した山根明・日本ボクシング連盟会長の席もあった=岐阜市のOKBぎふ清流アリーナで2018年8月1日午後2時39分、藤田健志撮影

助成金流用など12項目列挙 スポーツ庁やJOCが調査へ

 アマチュア選手を統括する日本ボクシング連盟に内紛が起こっている。山根明会長(78)らについて、全国333人の有志が日本スポーツ振興センター(JSC)から交付された助成金の流用や判定への介入など12項目の不正を列挙した告発状を提出した。受け取ったスポーツ庁や日本オリンピック委員会(JOC)も調査に乗り出した。【小林悠太、藤田健志、倉沢仁志】

 「ここ数日、日本連盟のことが話題になっている。事実なら、山根会長をはじめ皆さまに辞めていただきたい」。1日に岐阜市内であった全国高校総体ボクシング競技大会の開会式。主管する岐阜県連盟の四橋英児会長はこう突きつけた。出席予定だった山根会長は体調不良で入院したといい、姿はなかった。

 都道府県連盟の有志でつくる「日本ボクシングを再興する会」が提出した告発状では、2016年リオデジャネイロ五輪代表の成松大介選手(自衛隊)が15年度に交付された助成金240万円を山根会長の指示で3等分し、別の2選手に分配した不正流用が指摘された。また、山根会長が指示に従わない判定をした審判を脅迫して大会途中に帰らせたことも挙げられている。山根会長は以前、奈良県連盟トップだった。関係者の間では山根会長の指示で同県選手を優遇する「奈良判定」という言葉があるほどだ。

 告発状に対して、日本連盟は1日、公式ホームページ(HP)に説明文を掲載した。助成金の不正流用は「遺憾ながら事実。他2選手に回せば、全体の強化に役立つと安易に考えた」と弁解した。しかし、判定への不当介入疑惑は有効打に対する認識の違いを挙げ「審判不信をあおるもの」などと否定した。HPで当初は「(助成金流用は)会長の責任であり、JSCやJOCに謝罪いたします」と記したが、慌てて削除するどたばただった。

 山根会長は大阪府出身。プロボクサーを経て、1994年から国際アマチュアボクシング連盟(当時)常務理事を務めるなど海外にも顔が広い。11年に日本連盟会長に就き、プロアマ交流を促進したという12年ロンドン五輪では、ともにプロに転向した村田諒太、清水聡の両選手が日本ボクシング界で44年ぶりのメダルを獲得した。

 ただし、HP上の肩書が「終身会長」とあるようにワンマンぶりへの批判は強い。ある県の連盟幹部によると、山根会長には「おもてなしリスト」が存在して、全国高校総体でも訪問に備え、革張りの椅子を用意した。別の県連盟の幹部は「広告費などを集めても選手のためでなく、接待で消える。みんな爆発寸前だった」と憤る。

 20年東京五輪を前に競技団体の内部対立が絶えない。今春に発覚したレスリングの伊調馨選手へのパワーハラスメント問題も一例だ。JSC幹部は「自浄作用が働いて解決することが理想。東京五輪前にスポーツのイメージが悪くなっていく」と顔をしかめる。

 早稲田大・友添秀則教授(スポーツ倫理学) 競技団体の内部対立が相次いで表面化している背景には五輪バブルがあるのではないか。2020年東京五輪へ向け、スポーツ強化の国の助成金などが増えて浮足立っているように思える。これまでは起きなかったことや関係者が我慢して表面化しなかったことが、多額の金銭が絡んで噴き出した印象だ。

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