2018年7月1日日曜日

高橋大輔らしい決断

 高橋大輔らしい決断だ。高橋はスケートを通じて音楽を感じ、表現することが大好きだったが、それと同じくらい愛していたのが、究極の緊張感の中での演技。「(いい演技を)できるかできないか。その緊張感がたまらない」と現役時代、よく言っていた。

高橋大輔さん

 引退後、歌舞伎役者と共演したアイスショーなど、新しい挑戦もあったが、試合の緊張感にはかなわない。2月の平昌五輪をテレビの仕事で取材していた時も、選手たちから伝わる緊張感に毎回、「しびれる」「感動した」とうらやましそうに話していた。

 不完全燃焼な思いもあったろう。4年前、ソチ五輪6位で終わった後、膝の調子が芳しくなく、1カ月後に埼玉で行われた世界選手権を欠場。そのまま引退した。すっきりしないピリオドの打ち方であった。

 今季からルールが変わる。4回転ジャンプの基礎点は大きく下がり、ミスした際の減点は上がった。スピン、ステップも含むプログラム全体で表現する選手には追い風だ。一方、フリーの演技時間が4分30秒から4分に短くなる。体力の負担が軽くなるようにみえるが、表現力だけで会場の空気を支配できる高橋のようなタイプには、見せ場が減ることを意味する。

 簡単な道でないのは承知の上。順位どうこうでなく、納得できるまでスケートをして燃え尽きたい。そんな32歳の挑戦だろう。(原真子)

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