2018年5月27日日曜日

悪質タックル 日大と定期戦中止 良好ライバル断交

 アメリカンフットボールの日大と関学大の定期戦(6日、東京・アミノバイタルフィールド)で起きた日大の宮川泰介選手(20)の悪質タックル問題は26日、今年まで51回続いた両校の定期戦中止に発展した。ともに大学アメフット界を引っ張ってきた名門校は良好なライバル関係を築いてきたが、断交した形だ。

 両校は1955年11月、大学日本一を決める第10回毎日甲子園ボウルで初対決して26-26で引き分けた。それ以降は両校は宿命のライバル関係になり、昨年の第72回大会まで史上最多の29回対戦し、日大が17勝10敗2分けと勝ち越している。

 同ボウルで関学大は史上最多51回出場で優勝も最多28回、日大の34回出場と21回優勝はいずれも関学大に次ぐ。

 第1回定期戦は67年5月に行われ、関学大が22-20で勝利。定期戦中止をこの日の記者会見で発表した関学大の小野宏ディレクターは「昨日、当時4年生で主務だった方から電話があり、『非常に残念だ』と。OBも残念に思っている」と悲しんだ。【来住哲司、倉沢仁志】


日大のアメフット選手による悪質タックル問題の経緯

<5月>

 6日 日大と関学大の定期戦で日大の宮川泰介選手が、パスを投げ終えて無防備な関学大QBに背後からタックルし、全治3週間のけがをさせる

10日 関東学生連盟が宮川選手の対外試合出場禁止と日大の内田正人監督への厳重注意処分を発表。日大は部のホームページに謝罪文を掲載。内田監督は関東学連に8月末までの指導自粛などを申し入れる

12日 関学大が記者会見し、日大に反則行為の見解と謝罪を求める抗議文を10日付で送付したと公表

14日 法大、東大、立大が選手の安全が担保されないことを理由に日大との春季オープン戦を中止

15日 日本協会の国吉誠会長がスポーツ庁に対応を説明。日大は反則行為の指示を否定する回答文書を関学大に届ける

17日 関学大が会見し、日大の回答を「誠意あると判断しかねる」などと批判。明大、成蹊大も日大との試合を中止

18日 桜美林大が日大との試合を中止。オープン戦全6試合が中止になる異例の事態に発展。宮川選手が関学大の負傷した選手と保護者に謝罪

19日 内田監督が辞任を表明。関学大の負傷した選手と保護者に謝罪

21日 負傷した関学大選手の父、奥野康俊さんが傷害容疑で警察に被害届

22日 宮川選手が弁護士の付き添いで東京都内で記者会見して「監督、コーチの指示」を証言

23日 内田前監督と井上奨コーチが東京都内で記者会見。指示を再び否定して、井上コーチが辞任を表明

24日 関東大学1部リーグ監督会が指導体制が改善されなければ、秋のリーグ戦での日大との対戦を拒否。日大が関学大に再回答

25日 日大の大塚吉兵衛学長が記者会見して謝罪。指導陣と選手の証言の食い違いに関するコメントを避けた

26日 関学大の鳥内秀晃監督と小野宏ディレクター、奥野さんが記者会見。日大の調査への不信感をあらわにする


日大アメフット部の再回答書の要旨

 <反則行為について>

・井上元コーチの言動が独断か内田前監督の指示かは判断できない

・「潰せ」は、アメフットでは日常的に使う表現。反則を容認するものではなく、けがをさせる意図もない

・井上元コーチは「アライン(セットする位置)はどこでもいい」「1プレー目で相手QBを潰してこい」と具体的な指示を出し、これを試合出場の条件として挙げている。同僚の選手の証言では、当該選手が本気でQBを潰す行為を指示されていると思い込んでいたことがうかがえる発言もある

<原因について>

・守備選手が「相手を潰せ」という試合出場の条件を、「けがをさせろ」と受け取ってしまった

・そのような状況になったのは、指導者と選手間のコミュニケーションが不足し、守備選手が精神的に思い詰めていたからと思われる

 <チームとしての見解>

・確定的な結論には至っていない。第三者委員会を設置し、原因究明、再発防止につなげていく

・守備選手を追い込んだ責任は指導者にあり、本人に責任はない。フィールド上の責任は全て監督にある


関学大アメフット部の見解と方針の要旨

 <再回答書への見解>

・内容には多くの矛盾があり、真実と認識できない

・選手へのヒアリングが現在に至るまで行われずに極めて不可解だ

・日大選手の発言は極めて信ぴょう性が高い。指導者の記者会見での発言内容はこれを否定する根拠がない

・指導者の指示と選手の行為との乖離(かいり)が明らかになっているのに、反応が乏しい

・反則を重ねて退場処分を受けたのに、ベンチ全体が一連の行為を予測していたように見え、違和感を覚える

・1プレー目で「QBを潰せ」という指示は負傷させる目的があると考えるのが妥当。指導者の指示と選手の認識は整合していた

・精神状態を悪質プレーの原因とするのは、選手の尊厳を損ねるもので納得できない

 <今後の方針>

・定期戦は信頼関係を取り戻すまで中止する

・日大の第三者委員会、関東学生連盟の規律委員会、最終的には捜査機関による真相究明を希望する

・日大選手や家族に対し、可能な限りの支援の可能性を模索する

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