
W杯ジャンプ女子(25日・個人最終第15戦)
ジャンプ女子の高梨がついに24日、W杯の勝利を単独最多の54勝にした。昨年2月16日に53勝目を挙げ男子のグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)と並んでから1年以上も勝利から遠ざかったが、日々努力を惜しまず改善に取り組んできた姿勢が実を結んだ。高梨は25日の今季最終戦も制し、勝利数を「55」に伸ばしシーズンを終えた。
高梨は常に「男子選手と戦っているわけではない」と前置きし、「シュリーレンツァウアーさんという英雄の記録と比べられるのは申し訳ない。自分は足元にも及ばない」と謙虚に語る。
高梨は2014年1月11日にサラ・ヘンドリクソン(米国)の13勝を上回り、女子で単独最多となった。それから41もの勝利を積み上げたことに価値がある。個人戦通算105試合目で55勝と、5割を超す驚異的な勝率。その原動力は、あくなき向上心だ。
昨秋、高梨の強さの秘訣(ひけつ)を垣間見る場面があった。長野県の白馬ジャンプ競技場の片隅には、2本の鉄柱を結ぶ形で「スラックライン」と呼ばれるベルト状の綱が10メートルほど張られている。バランスや体幹強化のために綱渡りのトレーニングをするジャンプ選手は多いが、高梨はこの日が初挑戦。最初は1、2メートルほど進んでは落ちていたが、たった一人で裸足になって何度も繰り返した。近くを通り掛かった高校生ジャンパーに「コツを教えてくれませんか」と呼び掛けることも。日没まで続け、半分ほどまで進めるようになった。「できるまでやりたい。でも暗くなって見えなくなって……」と名残惜しそうだったが、自分より実績のない若手選手からも学ぼうとする姿勢がそこにはあった。
今季は平昌五輪を制したマーレン・ルンビ(ノルウェー)にW杯で大きく水をあけられていたが、屋外競技だけに実力者も失敗することがある。高梨は気持ちを切らさずにいたことで、転がり込んだ勝利のチャンスをものにした。何事も細部まで突き詰め、継続した先に、前人未到の55もの勝利があった。【江連能弘】
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