◇夏場所が正念場
大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)は14日目の24日、横綱鶴竜の優勝が決まった。前日には貴乃花親方(元横綱)が「ゼロから出直し」宣言をしており、どこかしら弛緩した雰囲気の中で幕を閉じようとしている。しかし、親方たちが気をもんでいるのは4月7日に前売りが始まる夏場所(5月13日、東京・両国国技館)の観客動員。正念場の夏場所へ向け、千秋楽の持つ意味は重い。
昨年九州場所中に元日馬富士の傷害事件が表面化して以来、対応をめぐる混乱と新たな不祥事が続く中で迎えた今年初場所。観客のにぎわいを見ながら、元横綱の北の富士勝昭さんが厳しい顔で話した。「1場所や2場所はこれまでの流れで持つだろう。じわじわ来るのはその後だよ。夏場所からが大変かもしれないな」
23日に貴乃花親方の宣言があった後も、春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)らは「夏場所がどうなるか」と気をもんでいた。場所後に発足する新役員体制の下で最初の本場所でもある。
14日目の土俵。関脇栃ノ心が9勝目を挙げた。先場所は前頭ながら14勝1敗で初優勝し、今場所も優勝候補に挙げられながら、序盤で2敗するなど波に乗り切れなかった。
この日も勝ちはしたが、「どうしても左でこういくんだな。なぜか分からない」と、かち上げのしぐさ。上体が起きやすく「(重心が)高いよね。体が反っている」と首をひねる。それでも大関とりにつながる2桁勝ち星に望みを残した。「もう一丁ですね。力が出ていないこともないしね」。残り1番に、気合を入れ直した。
人気者の東前頭筆頭・遠藤は、10日目から5連勝で9勝目。来場所の新三役昇進が大きく近づいた。報道陣とは、相変わらず木で鼻をくくったようなやりとりに終始したが、観客からは一段と大きな声援を集めそうだ。
小結逸ノ城も9勝目を挙げ、2場所連続10勝の可能性がある。このところどっしりした寄り身に進境を見せていたが、この日は正代にもろ差しを許しながら、右で相手の首を押さえて左で振り回す上手投げ。入幕直後を思わせる豪快な勝ちっぷりで、館内を沸かせた。千秋楽の逸ノ城-栃ノ心戦は注目の一番になる。
◇主役の出番
西の筆頭・玉鷲も勝ち越しを決めた。過去1勝11敗の松鳳山を下し、勝ち越し決定よりも「松鳳山に勝てたのがうれしい」と実力者らしく落ち着いて話した。
先場所、新入幕で10勝を挙げ、敢闘賞を獲得した竜電は3勝7敗から1不戦を含めて4連勝し、ついに五分に戻した。今場所前も稽古場では好調だっただけに、負けが込んだ時、師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)に「心の中で調子に乗ってたんじゃないのか。そんなに甘くないぞ」と叱られたという。股関節骨折の大けがで十両から序ノ口まで転落しながら再起した苦労人は、「最後もしっかり自分の相撲を取り切るだけ」と静かに闘志を燃やす。
負け越した力士にとっても、千秋楽への思いはある。八角理事長(元横綱北勝海)の愛弟子、北勝富士は2勝6敗からいったん五分に戻しながら、2連敗してしまったが、「この2日間も自分の相撲が少しは取れている。(連勝の間に)来場所は見ていろよという気持ちが生まれた」という。手応えをつかんで「最後の1番、いい気持ちで終わりたい」。
年に1度の大阪場所。千秋楽だけ入場券を手にした観客もいれば、生まれて初めて生で大相撲を見る観客もいるだろう。夏場所に行こうかと、テレビ桟敷に座るファンもいるだろう。優勝は決まっても、ファンの楽しみを夏場所につなぐ千秋楽にできるか。本来の主役の出番が来た。(時事ドットコム編集部)(2018/03/24-21:06)

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