大相撲の横綱審議委員会(横審)が、横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)に厳罰を求めていく見通しとなった。九州場所千秋楽から一夜明けた27日、東京・両国国技館で全9人の委員が出席して開催。10月25日夜に鳥取市内で行われた酒席で、日馬富士が起こした平幕貴ノ岩(27=貴乃花)への暴力問題について報告を受け、多くの委員から「厳しい処分が必要」との声が上がった。横審としての見解は持ち越されたが、今後引退勧告を含め、厳しい判断を検討する。

 定例会を終えた北村正任委員長は、会見ではっきりと、横審として日馬富士への厳しい処分を求める可能性を口にした。「協会がこれだけ暴力をなくしていこうという中で、これは非常に厳しい処分が必要だろうという意見は委員会全体としてあった。横審の規則の中には引退勧告とか休場、注意などがあるが、具体的にどのレベルの処分という話にはなっていない」。現在、日本相撲協会の危機管理委員会が行っている事情聴取などの調査報告を受けて、来年初場所後の定例会を待たずに臨時で横審を開き正式に方向性を決める。

 この日はもともと、暴行現場にいた横綱白鵬らからの事情聴取も終わっていないため、正式な見解は出ない見通しだった。それでも今回の暴力問題を重くとらえ、20~30分程度で終了することが多い中、約1時間にわたって審議した。北村委員長は「今、相撲は大変な人気。すべてにおいて禁じられている暴力の問題が起きたのは(相撲界にとって)ダメージだ。相撲ファンの期待を裏切るものだ」と厳しい口調。今回の問題を機に、相撲人気の急降下を迎える危険性も指摘した。

 被害者の貴ノ岩への危機管理委の聴取ができていないことも問題視した。横審としても迅速な問題の調査結果報告を求めているが、師匠の貴乃花親方が貴ノ岩への聴き取りを拒否。これに同委員長は「貴乃花親方の姿勢は納得できない。理事という立場にあって、協会全体が進めることをぶち壊すような動きをしているという疑念、不可解だという意見はみんなあった」と明かした。また、貴ノ岩が九州場所を全休したことも「親方の意思と関取の意思は一致しているのだろうか。親方が力士1人の先行きを決めていいのか」と、本人は出場を希望していたのではないかと推測していた。

 日馬富士の暴行は鳥取県警も捜査しているが「横審が基礎とするのは協会の調査」(北村委員長)と、いち早く正確な報告を待っている。だが暴行問題に端を発し、明るみに出た相撲界の異様な言動の数々。横審によるメスはまず、日馬富士に厳罰を求めるところから始まる。