
体操の世界選手権(10月開幕、ドーハ)の代表選考会を兼ねた全日本選手権の最終日の29日、男女の個人総合決勝が行われ、男子は予選2位の谷川翔(かける)=順大=がこの日は86・465点、予選との合計172・496点で初優勝した。19歳2カ月での優勝は1996年の塚原直也の19歳4カ月を上回り、史上最年少となった。
予選1位の白井健三(日体大)は0・332点差の2位。予選5位の内村航平(リンガーハット)はこの日トップの86・566点をマークし、谷川翔と0・832点差の3位まで巻き返したが、国内大会の個人総合では2008年9月の全日本学生選手権以来の敗戦。
女子は村上茉愛(まい)=日体大=が合計112・398点で3連覇を果たした。
最年少V「実感ない」
最終結果が表示されると、ダークホースの優勝に会場からは驚きの歓声が上がった。これまで表彰台とは無縁だった谷川翔は「まだ実感が湧かない」と喜びをにじませた。
身長154センチの小柄な体だが、あん馬ではつま先まで伸びた旋回は美しく、鉄棒でも関節の柔らかさを生かして複雑な動きを披露した。技の難度を示すDスコア(演技価値点)で勝負する白井に対し、技の完成度を示すEスコア(実施点)が6種目中5種目で上回った。リオデジャネイロ五輪後、Eスコア重視の傾向が高まっており、その強みが発揮された。
千葉県船橋市出身。昨年世界選手権代表の兄航(わたる=順大、今大会7位)の背中を追い、小学1年から体操を始めた。「目標はお兄ちゃん」と公言するように、兄と同じく基本に忠実で丁寧な演技が持ち味だ。内村や航らからも「正しい体操」と評される。
昨年は腰のけがで振るわず、後半は試合出場さえかなわなかった。冨田洋之コーチが「昨年の悔しさが成長につながっている」と話すように、腰の状態が上向くのに比例して調子を上げてきた。
内村や白井を仰ぎ見ていた谷川翔だが、優勝後は「2人が僕をライバル視してくれたら」と話した。東京五輪に向けて新たなスターの誕生を予感させた。【円谷美晶】
内村、敗れても存在感 巻き返し3位
敗れはしたが、内村にとって納得できる演技内容だった。「ようやく試合で自分の強さを見せることができた」。予選で落下したあん馬は、きっちり立て直して安定感のある演技を披露。つり輪も新月面宙返りからの着地をぴたりと決めた。
5カ月ぶりの実戦だった3月のワールドカップは出場した4種目全てで予選落ち。今大会の予選も疲労から全体的に精彩を欠いた。この日も5種目めの平行棒で倒立姿勢を保てなくなるなど持久力に課題も残した。29歳は「老いを感じた」と自嘲気味に振り返る。
だが、重圧の懸かる場面では誰よりも力を発揮した。最終種目の鉄棒では若手選手にミスが出始めたのに対し、全盛時を思わせる手放し技「カッシーナ」で会場を沸かせた。
美しさの谷川翔と技の難しさの白井。上位2人の良さは対照的だが、どちらも併せ持つのが内村だ。「醜い姿であっても代表であり続けたい」。敗れたとはいえ、東京五輪に向けて内村が大きな存在であることに変わりはない。【田原和宏】
技の白井2位
○…初優勝が期待された白井は、2位に終わった後も「悔しさは全くない。楽しかった」と強調した。体操界で技の出来栄えや完成度を重視する傾向が強まっても、「自分が攻略するだけ」と高難度の技に挑戦するのが白井流。この日もひねり技など高難度の技を次々と決めた。ただ、優勝した谷川翔について「ほれぼれするような美しい体操」と評し、自身も「技のこなし方を見直していく必要がある」とも話した。
村上、圧倒3連覇
○…村上が自信みなぎる演技で3連覇を飾った。最後の床運動は、昨年の世界選手権で金メダルを獲得した種目。「見せつけるような演技をしようと思った」と振り返るように、代名詞のH難度の大技「シリバス(後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり)」をぴたりと決めた。予選、決勝ともに唯一の56点台をマークし「これで(5月の)NHK杯に向けて気持ちよく臨める」と満足感を漂わせた。
▽男子個人総合
(1)谷川翔(順大)172・496点(予選86・031、決勝86・465=床運動14・500、あん馬14・700、つり輪14・066、跳馬14・433、平行棒14・866、鉄棒13・900)(2)白井(日体大)172・164点(3)内村(リンガーハット)171・664点
▽女子個人総合
(1)村上茉愛(日体大)112・398点(予選56・032、決勝56・366=跳馬14・800、段違い平行棒13・766、平均台13・300、床運動14・500)(2)寺本(ミキハウス)108・896点(3)畠田瞳(セントラル目黒)107・664点
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