2018年4月1日日曜日

「仲間とは宝」で一丸 創成館、亡きOBに勝利誓う きょう準々決勝

 <2018 第90回記念センバツ高校野球>

 「仲間とは宝」と染め抜かれた横断幕が、甲子園に吹く浜風にはためいていた。センバツ第10日の1日、準々決勝に登場する創成館(長崎)のアルプス席には毎試合、昨年1月に亡くなった野球部OB、末松大空さん(享年20)のお気に入りの言葉が掲げられる。3月30日の試合でも、稙田(わさだ)龍生監督(54)は、自らを慕っていた末松さんへの思いを胸にサヨナラ勝利。次戦に向けて「またいい試合を見せてやりたい」と誓う。

 末松さんは2012年に入部し、北九州市の実家を離れ寮生活を始めた。稙田監督から見ると「言うことを聞かない、やんちゃな少年」だった。ただ、実は繊細で気配りできると気づき、2年生の秋に寮長に指名。後輩に礼儀を教え、部員をまとめる経験をした末松さんは、帰省のたびに「立派になったな」とほめられ、稙田監督に感謝するようになった。

 末松さんは15年、野球を続けるつもりで大学に進学した。ところがその直後、激しい腰痛と高熱で病院に運ばれ「急性骨髄性白血病」と診断される。抗がん剤や放射線治療などで疲弊する末松さんに、野球部の仲間は「しっかり治さんば」と励まし続けた。末松さんも一時退院の許可が出ると創成館に足を運び、稙田監督や野球部の仲間と現役時代の話に花を咲かせた。

 15年秋に退院したものの、1年後に再発し入院。闘病生活の目標だった「野球部忘年会への出席」を車椅子に乗って果たした1カ月後、末松さんは息を引き取った。ひつぎには、稙田監督のグラブが納められた。稙田監督から「何かほしいものはないか」と聞かれた末松さんが所望し、病室にずっと飾っていたものだった。

 3月30日の智弁学園(奈良)戦。延長十回にサヨナラ本塁打で勝利するのを母真奈美さん(51)がアルプス席で見届けた。「本当にいいチーム。これが、あの子が大好きだったチームです」と涙を流した。「末松にも、ご両親にも勝利を見せたかった」という稙田監督。1日の智弁和歌山(和歌山)戦でも、いつもと同じようにスマートフォンに保存した末松さんの写真に「見守っていてくれよ」と声をかけ、試合に臨む。【今野悠貴】

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