低く、鋭く、速く。これぞ日馬富士の相撲だった。「余計なことを考えずに、きょうの一番に集中しようと思った」という大一番。本割で両前みつを引き、優勝決定戦では右を差すと、闘志をむき出しにして一気に走った。横綱を支えるのは、やはりこの気迫だ。11日目を終えた時点で星の差が3つもあったが、3横綱2大関が休場した異例の場所を象徴するような大逆転優勝を飾った。
序盤戦で3日連続の金星配給という屈辱を味わった。それでも「忍ぶということ」と歯を食いしばった。両肘に不安を抱え、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も「持ち味の立ち合いができず、十分な相撲を取れる状況ではない」と案じるほどだった。10日目には4個目となる金星を配給。それでも日馬富士は「心技体がうまくかみ合わなかったが、前を見て、あしたを見て。一日一日の努力を積み重ねてきた」と話す。
通常の場所なら序盤で休んでいたことだろう。だが、泣き言を一切並べることもなく、「目の前の一番に命をかけて、全身全霊で相撲を取った」。最後のとりでを守るように、「一人横綱」として土俵に立ち続け、しかも番付の秩序も保った。そこに日馬富士の真の強さがあった。
数字だけを見れば胸を張れるものではないかもしれない。1場所15日制が定着した1949年以降、11勝(4敗)での優勝は今回で3例目というワーストタイ記録だ。だが、本人が「精いっぱいやった結果。優勝は優勝です」と言うように、とがめるものはいないだろう。これまでとひと味違う優勝になったのではないかと問うと、率直に胸の内を明かした。「土俵の神様が味方してくれた」(金子英介)
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